地震対策の構造「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の違いはご存じですか?

地震対策の構造「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の違いはご存じですか?

不動産の購入を検討している人にとって、地震大国である日本では地震に強い立地かどうかに併せ、物件の耐震性は必ず確認したい項目です。
一般的に建物の構造形式は、「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の3つがありますが、それぞれの違いはご存じでしょうか?
各構造によって、室内での揺れ方等が変わってくるため、大事な命や家財を守るために、しっかり理解しておきましょう。

そもそもなぜ日本は地震大国と言われるのか?

地球の表面はいくつもの固い岩盤(プレート)に覆われており、それぞれのプレートは長い年月をかけて少しずつ移動しています。
プレート同士がぶつかる場所では、陸側のプレートは海側のプレートに引きずり込まれ、その歪みが限界に達すると陸側のプレートが一気に跳ね上がります。これがプレートの境目で起こる地震のメカニズムです。

日本列島が位置する場所には北米プレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレートの4つのプレートがぶつかり合う地域であるため、世界の中でも地震が多く発生しており地震大国と言われています。
地震の発生するメカニズムは、海溝型地震と内陸(直下型)地震との大きく2つに分類されます。

海溝型地震

こちらは前述した様に、陸側のプレートは海側のプレートに引きずり込まれ、蓄積された歪みが一気に跳ね上がることで起こる地震です。
プレートの境目、震源地が深いため、広範囲で揺れる時間が長く、津波を伴うことが特徴として挙げられます。
東日本大震災が主な例です。

内陸(直下型)地震

海側のプレートが陸側のプレートを圧迫しすることで歪みが生じ、その歪みが大きくなると陸側のプレート内、活断層などの弱い部分でずれることで起こる地震です。
海溝型地震に比べ規模は小さいものになりますが、局部的に大きな揺れを起こす地震です。震源地が浅いため、初期微動継続時間が短く、大きな揺れが特徴とされます。
阪神淡路大震災が主な例です。

地震に強い地域を調べるにはハザードマップを確認

自然災害を確実に把握・予測することは難しいですが、各自治体が発行しているハザードマップを見ることにより、過去に発生した災害データから、地域のどの辺りが災害によりどの程度被害を受けるかを予想することはできます。
対象不動産を購入した後の生活に直結する項目なため、重要事項説明書の交付時にも必ず説明はありますが、購入検討エリアを大体決めるのはもっと初めの段階なため、自分自身で調べておく必要があります。

地震による物件への影響

耐震性が高い物件と低い物件とで地震から受ける影響はことなります。以下、一般的な木造住宅における影響について、震度階級ごとに記載します。


(気象庁「気象庁震度階級関連解説表」より筆者作成)

物件選びのタイミングで地震対策

この地震大国では地震が起きない地域を断定することは不可能です。
そのため、ご自身の通勤や暮らしに便利な地域で、生活になるべく影響がない様に地震の揺れに耐えられる不動産を選ぶことが、地震対策+不動産購入の鍵になります。

耐震構造

制震構造とは、柱や梁自体の強度によって地震に耐える造りになっているものです。大地震のときには大梁や筋交い等の主要な構造部分が変形して地震の揺れに耐えます。地震のエネルギーが直接建物に影響するため、他の構造に比べ室内への損傷を受けてしまいます。元々耐震性が認められるだけの梁や柱を採用することから建築コストは他の構造に比べて抑えることができます。古くからこの構造は一般の一戸建などにも採用されており、基本的な地震対策の構造と言えます。

メリット

・他の構造に比べて安価
・地震だけでなく暴風にも強い

デメリット

・上層階ほど激しく揺れる
・繰り返しの地震に強い
・家具の転倒等損傷のリスクが高い
・被災後に修繕が必要になる可能性が高い

制震構造

制震構造とは、耐震構造同様、建物自体で地震に耐えますが、梁や柱に地震の揺れを制御するダンパーを設置します。
ダンパーが地震エネルギーを制御するため、建物自体の揺れも耐震構造より抑えられ、主要構造部分の損傷を軽減することが期待されます。

メリット

・免震構造よりも安価
・耐震構造に比べて建物内の損傷を抑えることができる
・繰り返しの地震に強い
・被災後のメンテナンスが簡単
・建物の倒壊を防ぐことができる可能性が高い

デメリット

・耐震構造よりもコストがかかる
・軟弱な地盤には不向き
・耐震構造と同じように揺れは強く感じる
・家具などを固定する必要がある
・ダンパーの定期的なメンテナンスが必要

免震構造

免震構造とは、建物と地盤の間に免震ゴム等の装置を設置することにより、地震の揺れを吸収し、建物自体の揺れを小さくする構造です。
建物自体があまり揺れないため、室内で家具が転倒することも少なくなり、損傷なども最小限にすることが期待されます。
建築時のコストも多く、更にメンテナンスの時には免震ゴムなどの免震装置・免震部材などを建物から切り離し交換等を行う必要があるため、建築時だけでなくメンテナンス時にも他の構造よりもコストがかかります。
比較的歴史の浅い工法のため、耐用年数や技術面での比較が難しいと言われています。

メリット

・大きな地震でも建物がほとんど揺れない
・建物の内部の損傷を防ぐことができる
・横方向の揺れに対して強い
・繰り返しの地震に強い
・被災後のメンテナンスが簡単
・建物の倒壊を防ぐことができる可能性が高い

デメリット

・他の構造に比べてコストがかかる
・軟弱な地盤には不向き
・免震装置の定期的なメンテナンスが必要(竣工後5年目、以後10年毎)
・広い土地が必要
・平常時でも多少の揺れを感じる可能性がある
・暴風や津波にはあまり効果がない
・地下室を作ることができない
・対応している建築メーカーが少ない
・歴史の浅い工法のため耐用年数や技術面での比較が難しい

「耐震構造」「制震構造」「免震構造」それぞれの違い

建物を外から眺めているだけではその建物がどのような構造で造られているかを把握することは難しいですが、「耐震構造」「制震構造」「免震構造」、それぞれ地震の揺れへの対策方法・揺れ方・メンテナンス等が異なります。
免震構造が最も地震の揺れには強い特徴を持ちますが、建築時にもメンテナンス時にも多額の費用がかかり、比較できる前例が少ないことなどの反面も持っています。
制震構造は耐震構造と免震構造の丁度中間でそれぞれのメリットを持ちますが、逆に言うととどの長所も一番優れている点ではないことも言えます。

まとめ

近年免震構造が地震の影響を受けにくいと注目されていますが、予算や希望の建築メーカーでの対応の有無などが場合や個人によって異なるため、どの構造の不動産が良いかは一人一人異なります。
構造1つの選択肢で、生活上の費用や大きな地震が起こった時の被災状況に大きく影響するため、よく理解した上で購入(建築)する不動産は決めましょう。
ただし、購入を検討している地域の地盤の強さや各構造の特徴、資金計画を全て理解するには不動産の知識や調査の知識、地域の知識が不可欠となります。行き詰まる前に不動産のプロに相談することも検討しましょう。

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