登記事項証明書(全部事項証明書)から分かること。

登記事項証明書(全部事項証明書)から分かること。

不動産を所有する時に欠かせないものが「登記」です。不動産登記とはその土地や建物(不動産)自体の広さやどのような種類なのか、また誰の所有物なのか、どのような権利が付いているものなのかを記録したものです。
登記をしなければ第三者に対抗することができないため、「自分のものだ」と主張することができません。
登記内容は登記事項証明書に記載され、この1件にその不動産に対してどのような権利がかかっているのかが読み取れます。
不動産を売却・購入する時には必ず登記事項証明書を見て、理解することが大切ですが、今まで不動産を売却・購入したことがない人にとっては日常生活で見るものでもなく、初めての時は戸惑うことも多いでしょう。
そこで、今回は登記事項証明書の見方について解説します。
この記事はINOVE(イノベ)が提供しています。INOVEは第一住建グループが運営する新しい不動産総合サービスです。

登記事項証明書(全部事項証明書)の記載内容

表題部

不動産の基本的な事項が記載されています。

土地

法務省 登記事項要約書(様式例)

・所在

土地の場所。市町村字まで記載されます。

・地番

土地の番号が記載されます。
住居表示が実施されない場合は住居表示と同じ番号(郵便物が届く書き方)になります。
*住居表示の実施…建物に対して地番とは異なる番号を付けられること。
例)地番:101番 住居表示:3-10

・地目

土地の用途・種類が記載されます。
宅地の他、田・畑・山林・公衆用道路・雑種地などがあります。
登記されている地目と現況が異なる場合の判定は現況優先になります。
例)登記されている地目:田 現況:宅地 → 地目:宅地

・地積

土地の面積が記載されます。
必ずしも正しいとは限らないため測量図などを参考に確認することがおすすめです。

・原因及びその日付[登記の日付]

土地が表示登記された原因及びその日付が記載されます。

・所有者

表示登記された時点での所有者の住所・氏名が記載されます。
ただし、表題部の所有者欄は、土地を特定するためのもののため、第三者への抵抗力にはなりません。
登記事項証明書では、下線が引かれている部分はその内容の変更・消滅を意味しています。
今回の場合、所有者については権利部(甲区)を見る様にしましょう。

建物

法務省 登記事項証明書(様式例)

・所在

建物の所在が番地まで記載されます。

・家屋番号

建物につけられた番号が記載されます。

・種類

建物の種類が記載されます。
居宅の他、店舗・共同住宅・事務所・倉庫・車庫などがあります。

・構造

建物の構造が記載されます。

・床面積

建物の床面積が記載されます。見本点線は小数点の意味のため、今回は1階が80.00㎡、2階が70.00㎡となります。
増築した場合は増築した面積を追加で登記するのが原則ですが、未登記のままの不動産も多くあります。中古不動産を購入する時には、建物図面・現況の間取図との比較が必要になります。
*床面積の測り方は2種類で「内法」または「壁芯」になります。
1つは、壁の内側から測った「内法」で、登記されるのはこちらの方法のため「公簿」とも言われています。
もう1つは、壁の中心から測る方法「壁芯」です。マンションのパンフレットなどはこちらの利用が主流です。
この2つの表現によって同じ不動産でも表示する面積が異なるため(「内法」<「壁芯」)注意が必要です。

・付属建物

1つの建物に1つの登記事項が基本ですが、物置や車庫などの様に、主たる建物の一部として使用される建物の場合は、今回の様に付属建物として登記されます。

権利部(甲区)

所有権に関する事項が記載されます。
最初の所有者~現在の所有者まで、「いつ」「何が原因」で所有権が移ったのかが記載されています。
所有者が変更になっても下線は引かれません。
また、複数人で一つの不動産を所有している場合その持ち分もこちらに記載されます。相続等で、複数名の1人だけが変更になっていることもあるので、権利が誰から誰にどの割合で移っているのか、を見る習慣をつけましょう。

法務省 登記事項証明書(様式例)

様式例の場合、平成20年10月15日に甲野 太郎さんが最初の所有者として登記(受付番号 第637号)し、その後令和1年5月7日に法務 五郎さんが売買によって所有者になり登記(受付番号 第806号)したことが読み取れます。
受付年月日・受付番号は所有者が持っている権利証または登記識別情報通知の内容と一致します。*登記識別情報通知は平成17年頃から権利証に代わって発行される様になった書類です。
所有者変更の原因は売買の他、相続・贈与・財産分与などもあります。
記載内容には、競売や差押え、仮登記、買戻特約なども記載されるため、所有者確認以外にも注意深く見る様にしましょう。

権利部(乙区)

所有権以外の権利に関する事項が記載されます。

法務省 登記事項証明書(様式例)

主に抵当権、根抵当権、地上権、賃借権などがあります。
住宅ローンで不動産を買った場合、その不動産には保証会社の抵当権が設定されます。
債権額、利息、損害金、債務者、抵当権者が記載されます。
受付年月日・受付番号は債務者が持っている抵当権設定登記済証書の内容と同じです。

様式例の場合、令和1年5月7日に法務 五郎さんが4,000万円借りて、同日にその担保としてこの不動産が担保に入ったことが読み取れます(受付番号 第807号)。
現時点での残額がいくらかまでは記載がないため、住宅ローンの返済計画表や残高証明書、取り扱い金融機関店舗で確認するようにしましょう。

共同担保目録

乙区に表示されている抵当権について、この不動産以外にも担保設定されている不動産があれば、共同担保目録に記載されます。

法務省 登記事項証明書(様式例)

補足:マンション(区分)の場合

マンションやショッピングモールの様に1つの建物の中に独立した部屋がある建物のことを「区分建物」と言います。
登記事項証明書の見方は前述とほぼ同じですが、表題部と権利部(甲区)に少し違いが見られます。

表題部

法務省 登記事項証明書(様式例)

・建物の名称

マンション名が記載されます。

※床面積

専有面積の内法面積が記載されます。
固定資産税課税対象面積は持ち分の共用部分の面積も含むため、納税通知書や固定資産税課税証明書の課税面積と登記事項証明書の床面積は異なることが多いです。

権利部

・敷地権の表示

*敷地権…建物と土地を一体化して登記された権利形態のこと。主にマンションに採用されています。建物と土地がセットのため、別々で売却・購入などはできません。

法務省 登記事項証明書(様式例)

・土地の符号

マンションの敷地が複数の土地で構成されている場合に、1筆(1土地)あたりに付けられる番号が記載されます。土地2筆から構成されているマンションでは符号は2つに分かれて表記されます。

・敷地権の種類

土地の権利が記載されます。
所有権の他、賃借権などがあります。

・敷地権の割合

一般的には(専有部分の床面積)/(建物全体の専有部分の総床面積)で計算されます。1つの建物で1つの区分だけを所有している場合は、固定資産課税証明書に記載されている持ち分と一致します。

まとめ

以上、登記事項証明書の見方について解説しました。
登記事項証明書をしっかり読み取れば、対象不動産がどのような経緯で今の状態になったのか、概ね分かります。
不動産を売却・購入する時には登記事項証明書(全部事項証明書)をよく見て確認するようにしましょう。
参考:登記事項証明書 ~5つ種類と発行方法・手数料について~

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