原状回復時に知っておきたい建物改善の松竹梅

原状回復時に知っておきたい建物改善の松竹梅

不動産オーナーにとって、建物や部屋の改修は避けられない課題です。特に原状回復の際には、どこまで手をかけるべきか、どのように改善するか、そしてコストとのバランスをどう取るかが重要なポイントとなります。本記事では、価格に応じた建物改善の方法を「松」「竹」「梅」の3段階に分けて、具体的な事例と共にご紹介します。改修工事のコツがわからない、募集が思うように進まないなど現状の賃貸経営にご不安やご不満のあるオーナー様は、ぜひご覧ください。

梅:通常の原状回復にプラスワン

プラスワンと言っても、なるべく費用をかけずに次の募集活動をしたいのが本音です。この梅のランクでは、通常の原状回復と費用を変えずに、もしくは少し投資することでプラスワンする方法をご紹介します。

貼り換え予定のクロスの一部にアクセントクロスを入れる

前の賃借人が退去すると、家具や家電の設置による黒ずみや電気ヤケ、日常使用による汚れが生じるため、クロスの貼り替えは原状回復の定番です。多くの場合、一般的な安価なクロスのうち無難な白基調のものが選ばれがちですが、洋室や廊下、トイレなどの一部にアクセントクロスを取り入れることで、空間の印象を一新し、印象をアップさせることができます。選定するクロスの種類にもよりますが、白基調のクロスと同等の価格で施工できるものも多くありますので、貼り換えが必要となった個所にアクセントクロスを取り入れてみてはいかがでしょうか。
施工事例:コストを抑えつつ印象アップを実現

お部屋探しの絶対条件となる条件に投資する

共用部や部屋に人気の設備を導入することは、比較的安価で効果的に募集活動を改善できる方法です。特に「インターネット無料」は、今やお部屋探しの絶対条件ともいえるほどの人気を誇っており、無料インターネットを導入していない物件は、検討の段階で候補から外され、入居検討の対象にすらなれないこともあります。逆に、無料インターネットを導入することで、候補に上がりやすくなるでしょう。
※設備の人気ランキングについて
2023年10月16日の賃貸住宅新聞による「周辺相場より家賃が高くても入居が決まる設備TOP10」では、単身者向けの1位が「インターネット無料」、2位が「エントランスのオートロック」、3位が「高速インターネット」、4位が「宅配ボックス」、5位が「浴室換気乾燥機」でした。ファミリー向けでも、1位は「インターネット無料」、2位が「エントランスのオートロック」、3位が「追いだき機能」、4位が「システムキッチン」、5位が「宅配ボックス」となっています。特に「インターネット無料」は9年連続で1位を独走しており、もはやお部屋探しには欠かせない条件となっています。
また、宅配ボックスの設置もコストパフォーマンスに優れた改善方法です。宅配ボックスの箱数は、総戸数の2割以上が目安とされています。宅配ボックスといっても価格の幅が広く、ランニングコストが不要なものもございますが、いたずらや事故などがご心配でしたら24時間管理体制のあるオンライン型の宅配ボックスを検討することもおすすめです。

既存設備のリメイクで印象アップをする

既存のキッチンパネルやユニットバスの壁に、ダイノックシートを貼ることで印象をアップさせる方法もあります。設備自体に不具合がなく、まだ使用できるものの、経年劣化による色褪せや傷、デザインの古さが目立ってきた場合に効果的です。
アクセントクロス貼り換えのように費用据え置きというわけではないですが、キッチンやユニットバス交換のような大きな出費はかけずに、室内の印象をアップさせることができるアイデアです。また、ダイノックシートはDIYでも施工できますので、コストをさらに抑えたい場合はオーナー様ご自身で施工することも可能です。

竹:水まわり以外のリノベーション

梅ランクでご紹介したリノベーションより少し費用はかかりますが、印象をガラリと変えることができる方法です。

床のリノベーション

時代とともに、新しい設備が流行するのと同時に、床のデザインにも流行があります。以前は茶色基調で幅90mm程度の狭いフローリングが一般的でしたが、最近では、清潔感や高級感を求めて、白基調で幅120mmのワイドタイプのものが主流になっています。
フローリングに痛みや汚れが生じ、貼り換えが必要となった際、新しいフローリングに貼り換えるとコストが大きくなりますので、費用を抑える場合は既存のフローリングの上にクッションフロアを上貼りする方法もあります。しかしクッションフロアは家具によるへこみや傷がつきやすいという特性があり退去のたびに貼り換える必要が生じやすく、また貼り換える際は部分的な施工ではなく面単位(部屋全体)の貼り換えとなりますので、原状回復工事のたびに全面貼り換えとなり、毎回同額の出費が嵩んでいきます。
そこで長期的な視野での出費を抑えながら部屋の印象もアップさせる方法としてフロアタイルへの貼り換えというアイデアもあります。商品自体の単価はクッションフロアより高額になりますがクッションフロアよりも高級感があり、フローリングより安価で部分貼り換えが可能ですので一つの選択肢として検討するのもよいでしょう。資金状況や物件の売却予定などを考慮して、最適な選択をしましょう。

収納部分のリノベーション

不動産オーナーにとって意外かもしれませんが、賃借人がよく抱える困りごとの一つが「収納力不足」です。退去理由に直接つながることは少ないものの、よくある悩みです。既存のクローゼットだけでは収納が足りず、チェストや棚を購入するがために生活スペースが狭くなってしまう、というのはよくある話です。
さらに、洗濯機周りやトイレに洗剤や掃除グッズ、トイレットペーパーを置く時に、棚がないため床にそのまま置いたり、別途突っ張り棒を購入する必要があるという悩みもよく聞かれます。この問題を解消する方法として、壁面収納の設置が注目されています。収納が充実している物件は意外に少なく、これを改善することで近隣の競合物件との差別化が図れ、賃料アップに成功した事例もあります。
施工・賃料アップの事例:頭を悩ます1Kの収納問題を「棚とハンガーパイプ」で解消。賃料も5,000円アップ!

隣り合う2つの部屋の収納スペースを一つにまとめ、ウォークインクローゼット(WIC)やパントリーにする方法もあります。特に築年数が古い物件では、中段や天袋がある昔ながらの押入れタイプの収納が多いかもしれませんが、現代の生活様式では、洋服の収納やベッドでの就寝が主流となり、これらの収納は使い勝手が悪くなっています。そのため、空室期間が長引く可能性もあります。
収納部の壁を撤去するのは、意外と低コストで可能です。また、間取りを変更することで、募集活動に大きなインパクトを与え、物件の魅力を高めることができます。
施工事例:ターゲットを新婚・DINKSに絞り、空室期間短縮と賃料2.5万円アップを同時に実現

松:水まわりのリノベーション

キッチン、浴室、洗面、トイレの水まわりをリノベーションすると、やはり他の部分よりもコストはかかりますが、募集活動でネックになっている部分を解消することができます。

3点ユニットの解消

3点ユニットは限られたスペースでバス・トイレ・洗面の役割を叶えることができるため、昔から重宝されてきましたが、使用時には浴槽の中で体を洗った後に掃除をしてからお湯をはる必要があったり、トイレや洗面の床部分が濡れないようにシャワーカーテンをしておく必要があるなど工夫が必要なため、暮らしが豊かになるに連れて昔ながらの3点ユニットの人気が右肩下がりになってきています。元々3点ユニットで建てられた物件ではバス・トイレを別にするスペースもないため、一見解消が困難にも思えますが、元々の3点ユニットのスペースをシャワールームとトイレに分割し、3点ユニットを解消する方法もあります。
施工事例:コンパクトな1R/1Kにおける「3点ユニット」の解消と「室内洗濯機置場」の新設

室内洗濯機置き場の確保

築年数が古い物件の中には、各部屋に洗濯機置き場がなく、共用部にランドリールームを設けている物件もありますが、これも時代とともに人気が低下しています。この問題を解消する方法として、既存のキッチンの向きを変えたり、クローゼットをなくすなどして、部屋内に洗濯機置き場を新設する方法があります。また、スペースが取れない場合は、加熱部の下にコンパクトな洗濯機を収めたタイプのキッチンに交換する方法も検討できます。
施工事例:コンパクトな1R/1Kにおける「3点ユニット」の解消と「室内洗濯機置場」の新設

何を優先して改善するかは物件の課題を整理し予算に応じて判断しましょう

松竹梅の3段階で建物改善の方法を紹介しましたが、どれが絶対に正しいというわけではありません。まずは、これまでの募集状況や過去の退去理由を確認し、物件の問題点を整理することが大切です。例えば、内見はあるのに成約に至らない場合、物件に何か改善すべき点があるかもしれません。収納が足りない、設備が古いなど、競合物件と比べて劣っている部分がないかを見直しましょう。
次に、周辺の物件と自分の物件を比較し、市場のニーズに応えているか確認します。たとえば、無料インターネットや宅配ボックスが他の物件にあって、自分の物件にはない場合、それが入居者に選ばれにくい原因になっていることがあります。
さらに、予算を確認し、どの改善にお金を使うべきかを決めましょう。少ない予算でできる印象アップのリメイクから、大きなリノベーションまで、効果と費用をバランスよく考えて優先順位をつけることが重要です。
このように、物件の課題を整理し、競合状況や予算に応じて最適な改善方法を選ぶことで、賃貸経営を成功に導くことができます。

賃貸経営に満足していない方は第一住建グループにお任せください

原状回復時の建物改善についてお話しましたが、全ての判断をオーナー様が一人で行うのは難しいかもしれません。市場や競合物件の変化に対応し、どこに投資すべきかを判断するには、豊富な経験と専門的な知識が必要です。

弊社は、創業50年以上の歴史と信頼を築き、これまでに1万戸以上の物件を管理し、多くのオーナー様をサポートしてきました。さらに、私たちはプロの不動産オーナーとしても活動しているため、オーナー様と同じ視点で収益性向上に向けた最適な改善提案が可能です。
市場のトレンドを捉えた最新の改善プランや、コストを抑えつつ効果的なリノベーションの方法など、幅広い対応が可能です。賃貸経営にご満足いただけていない方、物件の価値を高めたいとお考えの方は、ぜひ第一住建グループにお任せください。経験豊富なスタッフが、オーナー様一人ひとりに寄り添ったご提案をさせていただきます。

PICK UPピックアップ