「定期借家」について
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2023/01/31
賃貸借契約には一般的に知られている「普通借家契約」と、期間を限定して賃貸住宅を借りる「定期借家契約」の制度があります。
平成12 年3 月に借地借家法が改正され、「良質な賃貸住宅などの供給の促進に関する特別措置法」(国土交通省)に基づき、優良な賃貸住宅が供給されやすくなることを目的として導入された制度です。
まだあまり浸透しておらず定期借家と聞いてもよく知らない方が多いですが、貸主のメリットもある制度になりますのでご検討の一助になればと思いテーマに設定いたしました。
目次
「定期借家契約」とは? 「普通借家契約」との違いは?
「普通借家契約」
・基本的に借り主が希望する限り住み続けられる(貸主からの解約には正当事由が必要)
・更新(法定更新、自動更新)することにより住み続けることが可能
「定期借家契約」
・入居期間が決められている
・住み続けるためには大家さんと借り主の双方の合意が必要。
更新ではなく再契約
「定期借家契約」における貸主のメリット
転勤等で一時的に貸す場合
優良な住宅が多い為 賃借人からも喜ばれるケースがあります。
建て替えを予定している場合
定期借家契約にすることで契約期間満期には正当事由不要で明渡しさせることができます。
不良入居者への対応
賃料支払いの遅れや近隣に迷惑を掛ける入居者を正当事由無しで再契約不可として退去させることができます。騒音や迷惑行為を立証する必要がない点は非常に大きなメリットになります。
解約に正当事由が不要
建物老朽化による建て替えの場合等は正当事由になりますが、適切なメンテナンスを行っていることが原因で、判例では正当事由と認めなかったケースもあります。
※立ち退き料を支払うことは正当事由にあたります
高齢の入居者(認知症、要介護)の受け入れ
社会的ニーズとして高齢者の受け入れ可否が取り沙汰されています。健康な高齢者も増えていることから年齢だけでは判断できない部分もあり
元気なうちはできるだけ引き受けたいと思われている方も多いようです。一方で介護が必要になったり、認知機能の低下など一人での生活が困難な場合は退去して頂くことも検討しなくてはいけません。この場合に柔軟に対応できる点が普通借に勝ります。
※合意を得た上での契約をお勧めいたします
「定期借家契約」のデメリット
・再契約不可が独り歩きして入居希望の総数が減る可能性がある
・必要書類の不備があると普通借家契約となる可能性がある
「定期借家契約」に必要なルール
・公正証書or借地借家法第38条2項書面
(定期借家契約についての説明書、原則として別個独立の書面で交付する必要があることに注意が必要です)
・期間満了日の6カ月から1年の間に、借り主へ期間の満了により契約終了の旨を通知する必要(終了通知)がある・期間満了後に双方の同意により再契約する場合は38条2項の説明をやり直す必要がある
※再契約を宅建業者が行う場合は重要事項説明が必要ですが、貸主と直接契約になる場合は重要事項説明は不要です。
※誤って更新した場合は普通借家契約となります
(注)賃借人からの期間内解約が認められるケース
以下3点を満たす必要があります
①200㎡未満
②居住用
③「転勤・療養・親族の介護」など致し方ない理由がある
※賃貸住宅の場合は合意の上で再契約可、入居者からの中途解約可の特約を入れケースが見受けられます。
最後に
定期借家契約の活用事例として面白い方法があります。
物件の利便性や使い勝手いい反面、駅から遠いことが原因で中々入居が決まらなかった物件について、「一度住んで貰えたら長期に暮らして頂ける」との思いから最初の2年間はお試し価格として賃料を下げた定期借家契約で結び、再契約後は賃料を戻し普通借家契約に変更する、リーシングの手法の一つを活用した事例がありました。
※最初の契約からそろそろ2年が過ぎようとしていますが、概ね普通借家で再契約をされています。
定期借家契約はアメリカ等諸外国では一般的になっています
原状10%に満たないといわれている定期借家契約ですが不動産資産運用方針によっては採用した方が良いケースもあるかと思います。
是非お気軽にご相談下さい。