【不動産オーナー必見】家賃を値上げするコツ!交渉の流れやリスクも解説します
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2024/11/29
「賃料収入を増やしたい」「空室を埋めたい」と考える不動産オーナーにとって、家賃の値上げは収入を増やすチャンスですが、同時にリスクも伴います。そのため、成功させるためのコツやリスクを理解し、慎重に進めることが大切です。また、家賃を引き上げるための具体的な流れも知っておきたいところです。本記事では、家賃の値上げを検討するオーナーが押さえるべきポイントを徹底解説します。
目次
そもそも家賃の値上げは認められる行為なのか?
一般的に不動産オーナーと入居者とで結ぶ普通借家契約において、家賃の値上げは入居者の同意を得なければ行うことはできません。ただし、借地借家法の第32条に基づき、正当な理由があれば家賃の増減を請求することができるとしています。
*借地借家法(借賃増減請求権)
第三十二条建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
家賃の値上げが認められる正当な理由には、具体的に次のような場合があります。
・土地の価格が高騰し、オーナーが支払っている固定資産税や都市計画税が増額された
・物価高でマンションの管理維持にかかる費用が増えた
・近隣の類似物件と比較すると極端に家賃が低い
家賃を値上げするメリット・デメリット
メリット
・毎月の賃料収入が増える
毎月の賃料収入が増えると、不動産オーナーが物件を維持管理するために負担する管理費や修繕費、税金の支払いなど運用コストのカバーに役立ちます。手元に余剰資金が残ることで今まで手を出せなかった物件の改善や新たに他の収益物件を取得することもできるようになります。また、予期しない突発的な修繕や空室リスクでの損失に対しても備えることができるため、不動産投資をより安定させることができます。
・レントロールが上がり、将来売却する時の価格が上がる
投資用物件は、物件が生み出す収益に基づいて評価されるのが一般的です。その収益情報をまとめた「レントロール」には、毎月の家賃や共益費、収入の合計が記載され、投資家が物件を購入する際の大切な判断材料となります。
賃料収入が増えると、このレントロールの数字も上がり、物件の収益力が高まります。たとえば、月々の賃料収入が10万円増えれば、年間で120万円も収益が増え、年間120万円の増収ですと、仮に利回り8%で売却した場合15,000,000円も売却額が上がります。安定して高収入を生む物件は投資家にとって魅力的なため、需要が増して市場での価値も高まります。その結果、将来売却する時の価格も上がりやすくなり、オーナーにとって大きなメリットとなるのです。
デメリット
・退居者が出る
家賃は入居者にとってなるべく削りたい固定費です。そのため強引な賃料の値上げは退去者を増やす可能性もあります。それまでは転居の予定がなかった入居者も「賃料が上がってしまうのなら・・」と転居を考えるきっかけにもなってしまいます。一つの具体例として、賃貸契約更新のタイミングで賃料を上げることを条件に入居時は市場相場よりはるかに安い賃料で契約できるというキャンペーンで入居した入居者が、いずれ賃料が上がるとわかっていても、やはり更新時になると「賃料が上がってしまうと生活が苦しくなる」と考え、契約更新のタイミングで退去したという事例もあります。賃料増額は思わぬ退去者を出すきっかけにもなりかねませんので慎重に行わなければなりません。
メリット | デメリット |
① 毎月の賃料収入が増える
② レントロールが上がり、将来売却する時の価格が上がる |
退居者が出る |
家賃を値上げするコツ
家賃を値上げするコツは、物件の価値向上に伴って実施することです。冒頭で述べたように、物価高の影響でオーナー負担が増えたことを理由に賃料を値上げすることも正当な理由とはされていますが、入居者にとってのメリットがない分、不満を生んでしまう可能性があります。入居者満足度が下がると入居期間の短縮、使用状態の悪化にも繋がるため、なるべく入居者満足度を引き上げる、少なくとも維持する必要があります。賃料を値上げしようとする物件が空室でこれから募集を行う場合と、既に入居者がいる場合に分けて解説します。
空室でこれから募集を行う物件に対して値上げを行う場合
空室の場合は、入居者と交渉を行う必要がないので比較的簡単に家賃を値上げすることができます。よくある方法の1つとして、前の入居者が退去した後、原状回復と同時にリノベーションをかけ、物件がグレードアップした分、賃料を上げて新しく募集活動を行う方法があります。
弊社が保有する物件で以前行ったものとして以下のような事例があります。
・1Kや1Rでよくある収納不足の問題を解決
壁面収納を洋室や防水パンの上・トイレに設置するリノベーションを実施し、賃料5,000円アップに成功
関連記事:頭を悩ます1Kの収納問題を「棚とハンガーパイプ」で解消。賃料も5,000円アップ!
・入居者のターゲットを新婚やDINKSに絞ったリノベーション
現代の生活様式に合わせた生活導線を確保できるように間取変更を伴うリノベーションを行い賃料2.5万円アップに成功関連記事:ターゲットを新婚・DINKSに絞り、空室期間短縮と賃料2.5万円アップを同時に実現
既存入居者がいる物件に対して値上げを行う場合
家賃を値上げする際によくある方法の一つが、エントランスや共用部の改修や無料インターネットの導入です。
・エントランス改修
エントランスや共用廊下をリニューアルすると、建物の外観や入ったときの第一印象が大きく改善されます。これにより、物件の魅力が高まり、入居者満足度向上や新規入居者の獲得に効果を発揮する可能性があります。
・無料インターネット導入
既存入居者の満足度を高めるには、無料インターネットの導入が特におすすめです。入居者個人でインターネット回線を契約すると月額4,000~5,000円ほどかかりますが、オーナー側で一棟契約すれば、高速インターネットでも月額1,500~2,000円程度のコストで提供可能です。この差額を考慮すると、家賃や共益費を2,000~3,000円程値上げしても、入居者にとって十分に還元され満足度も向上します。
実際の事例
弊社が管理する大阪市北区のマンションでは、無料インターネット導入をきっかけに共益費を3,000円アップすることに成功しました。こちらのオーナー様は、従来よりもグレードを上げた募集条件をご希望されており、「インターネット無料」はその条件に欠かせない要素と判断しました。この背景を踏まえ、リーシング対策の一環として無料インターネットを導入した結果、賃料条件の改善が実現しました。
具体的な流れ
家賃を値上げするときの具体的な流れは次の通りです。
① 近隣の競合物件など市場相場を調べる
まず、近隣にある競合物件の家賃や設備条件、募集条件を調べます。値上げを検討している物件となるべく設備や間取り、築年数、駅からの距離などが類似した物件を比較し、現在の自分の物件が市場相場に対して適切な賃料設定になっているかを把握します。
② 値上げ理由と値上げの金額、時期を決める
どのぐらい賃料を値上げしたいのか、物件に何を加えて付加価値を上げるのか、現状とかけられる予算、調べた市場相場を見比べて決めていきます。また、値上げをいつまでに完了させたいのかゴールを決めてから逆算して時期を決めましょう。入居してすぐの入居者や退去予定の入居者がいる場合は値上げ対象から外しておくなど、注意が必要です。
③ 空室であればリノベーションを実施
空室の場合は、このタイミングでリノベーションを行います。リノベーションが完了したら、すぐに新しい賃料設定で募集を開始します。なお、空室の場合は、以下の通知や交渉(④・⑤)は不要です。
④ 既存入居者に対して値上げの旨を通知・交渉
ここまでの準備が整ったら、既存入居者に家賃の値上げを通知します。法律で通知時期は定められていませんが、口座振替の変更手続きや合意書作成の時間を考えると、最低でも1ヵ月前、理想的には2~3ヵ月前に通知するのが望ましいです。
通知書には以下を明記しましょう。
・値上げの理由(市場相場や物件の改善点など)
・新しい賃料と現在の差額
・値上げの適用時期
⑤ 既存入居者との合意書の作成
既存入居者からの合意がとれたら必ず合意書を作成し、オーナー・既存入居者の双方が署名・捺印を行います。これにより、言った言わないなどのトラブルを未然に防ぎ、法的にも正式な手続きとなります。
この合意書には以下を明記してください:
・新しい賃料
・適用開始日
・その他必要な条件
家賃の値上げは事前調査が肝心
家賃の値上げを成功させるためには、入念な事前調査と準備が欠かせません。近隣の競合物件の市場相場を調査し、自分の物件の強みや改善点を把握することが第一歩です。また、値上げの理由や金額、実施時期を明確にし、入居者が納得しやすい条件を整えることも大切です。しかし、これらをオーナー個人で完璧に進めるのは容易ではありません。市場相場の分析や適切な値上げ幅の設定、入居者との交渉、法的手続きなど、専門的な知識と経験が求められる場面が多くあります。
そこで、プロの管理会社を活用することが非常に効果的です。プロのサポートを受けることで、手間や時間を大幅に削減しながら、賃料アップの可能性を最大化することができます。家賃の値上げを適切に進めることで、収益の向上だけでなく、物件の長期的な資産価値の向上にも繋がります。
第一住建は、大阪を中心に50年以上の歴史を持ち、10,000戸以上の管理実績を誇る不動産管理会社です。地域に密着した管理活動で培った豊富な経験とノウハウを活かし、オーナー様お一人ずつにとって最適な不動産投資・管理活動のご提案を行っています。不動産投資に関するお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。きめ細かなサポートで、オーナー様の収益向上を全力でサポートいたします。